知名度ゼロから応募者の志望度を高める採用の4ステップ

新卒採用は、中途採用より採用プロセスの回数を多く設定している企業が多いと思います。売り手優位の状況で大手有名企業でも内定辞退に悩んでいたり、合否判断を効率よくするためだけの採用プロセスだけでは行き詰まってしまうことになりかねません。そこで、今回は「応募者にどう魅力付けをするか」という視点での採用プロセスのつくりかたについて考えます。

採用プロセスの目的は2つ

まず採用プロセスの目的は、合否判断と魅力付けです。応募者の分類を4つのゾーンでわけてみます。

Aゾーン「採用したい、応募者の興味も高い」人がはじめから十分に集まってくる状況ならOK。しかしそうでなければ、Bゾーン「採用したいが応募者の興味(志望度)が高くない」人に魅力付けをして、Aゾーンに引き上げていく採用プロセスが大事です。

内定を出すタイミングで気持ちが高まっている状態をつくることをイメージして、魅力付けを目的とした採用プロセスの具体的な事例を紹介します。

魅力付けを目的とした採用プロセス

1.好意・興味をもつ

自分の希望や向き不向きが、応募時点ではっきりしている学生はもともと少ないので、初めの接点は、好意・興味をもつところにゴールをおきます。

楽しい・役に立つ・好き・成長できる・ワクワクする・・・など、行ってみたい、また来たい、と思われるために会社で用意できるベストなコンテンツ、ベストなメンバーを揃えます。

ここで会社の全般的なことを理解してもらう必要はなく、配付資料程度でまったくかまいません。(興味を持てば、あとで読みます)

ダイレクトリクルーティングでも、何をはじめの接触ポイントとしてスカウトするかについて検討してみてください。入り口を変えることで出会える人も変わります。必ずしも説明会に呼び込むことにこだわらず、複数の入り口を用意して応募者の反応から効果的なものを選び磨き込んでいきましょう。

たとえばこんな方法
・カジュアルなお茶、食事
・応募者が興味を持つような勉強会・セミナー
・就活の選考や自己理解に役立つコンテンツ
・海外・地方インターンや、ビジネスコンテストなどチャレンジ系イベント
・応募者に役立つか面白い動画、冊子など(直接会う形式にこだわらない)

2.浅い理解・共感

次は、少し理解を深めるステップに入ります。たとえば自分と若手メンバーなど身近で想像できるメンバーのやりがいを聞いてもらったり、仕事のエッセンスを体感できるような情報を伝えたり。
応募者自身のやりがいや強みについて整理して聞ける状態を用意すると「これは自分と合っているかも」と共感しやすくなります。

たとえばこんな方法
・社員座談会
・仕事のエッセンスの体験と社員のフィードバック
・インタビュー動画や資料
・応募者のモチベーションや価値観を理解するワーク

3.深い理解・共感

次の段階では応募者の興味や強みをよく聴きながら、会社のこれから解決していきたい課題や、仕事の厳しさなどについても開示します。その先に得られること、目指していることを語り、厳しさも含めて理解を深めてもらいます。

ここで応募者とやりとりするときには「とにかく当社に来てください!」というスタンスよりは、「〇〇なところは当社に合うと感じた、でももし活躍したいなら〇〇といった覚悟が必要」といった伸びしろや本人が向き合うべき課題についてしっかり事実を提示してあげます。売り手優位だからといって、新卒で入社して教わり成長する必要があるのは彼らですから、不必要に会社の価値が下がるようなコミュニケーションはとりません。

たとえばこんな方法
・マネージャーや、キーマンとの接触
・仕事のロールプレイング
・職場や店舗の見学や体験
・応募者についての率直なフィードバック(良い点・伸びしろがある点・合う理由・入社したらどうなれそうか)

4.自分ごと化・未来を描く

最終段階では応募者と会社の未来を重ね合わせていきます。応募者が「こうありたい」という未来がこの会社を選び働いていくこととつながっているか?を考えられる機会を用意します。リクルーターや人事の個別フォローで理解が深まる人も多くいます。
面接の場でいきなり考えさせるよりも、事前に聞くことや話してもらうテーマを伝えておいて、じっくり考える時間を取ったほうがいいでしょう。応募者の気持ちについて聞き手のフィードバックも重要です。

たとえばこんな方法
・経営陣との対話
・5年後・10年後の未来についてのプレゼンテーションや小論文
・これからの会社への提案

このように、会社から内定を出せる段階には、応募者の理解が十分深まっていて気持ちも高まっている状態がベストです。応募者にとって大事にしたいことは何か?ということなどをとにかく聞ききって最終的な決断をサポートします。このステップについては、別のコラムにて詳しく書きました。

新卒採用で内定承諾をとる人事のコミュニケーション術

2017.08.02

このような採用ステップがすでにできあがっている企業もあると思いますが、それぞれの目的を採用に関わるメンバーに浸透させることで効力があがります。

志望度はお互いの関わりであげていくもの

新卒は職歴がない分、ある意味何者にでもなれる存在です。選考のはじめのほうに「当社である理由がない」という理由で不合格になることがありますが、その会社である理由が初めからスッキリ見えている人はなかなかいません。「当社である理由があるかもしれないので探す、提案する」というつもりでコミュニケーションを取ることで、応募者が気づかない接点が見つかることもあります。

流れを大事にする

採用はナマモノ。新卒は次々と会社に接触するので一度あがった気持ちをキープしたまま次に進めるような「流れ」がとても大事です。

一度冷めてしまった気持ちを温めるのはエネルギーがかかるので、合否連絡や次の選考日の設定も含めてスムーズにします。どこか、採用プロセスでもったいない離脱が発生しているところを見つけたら改善してみましょう。

帰る前にその場で選考予約を取る、アンケートに日にちをチェックして予約を完了させる、選考前までにちょっとしたメールや動画を送るといった工夫をしている企業もあります。

柔軟に採用プロセスを変える

新卒採用は一旦決めた型にはまりがちですが、人や時期によって柔軟に採用プロセスを変えることも大事です。何か理由があって志望度が高い場合や、就職活動が終盤になると興味が定まったり、理解が深まったりしている場合があります。そのときは選考ステップを飛ばすなど臨機応変に対応できるほうがお互いにとっていいでしょう。再チャレンジ制度や選考のやり直しを有効に使っている企業もあります。

評価する目的だけでなく、縁のあった応募者との関係をあたためながら選考プロセスの中で応募者を育てていく姿勢がますます今後は重要になってきます。選考プロセスの設計は採用コンサルティングの専門家への相談が効果的ですが、そもそも運用側の目的意識によっても内容が変わるので、既に動いている採用プロセスにも少しでも取り入れられるヒントが見つかれば嬉しいです。

ABOUTこの記事をかいた人

井上真里

慶應大学経済学部卒。東証一部上場富裕層向け住宅メーカーに入社し1年目から採用担当となる。その後、1万名を超えるITサービス企業へ転職してこれまで採用担当者として東証一部上場企業2社で、のべ6,000名を超える応募者の選考に関わり、2,000名以上の面接を経験。2011年5月、26歳で独立。個人向けに全国の女子大学生対象に就職支援を行い過去500名以上の卒業生が、大手企業・人気ベンチャー企業に複数内定。また、採用コンサルタントとして複数の企業の社外人事として携わるほか、社外キャリアアドバイザーとして社員のキャリアカウンセリングを担当。 著書:「就活女子のための就活迷宮から抜け出すトビラ」(TAC出版)    「敬語・マナー」(新聞ダイジェスト社)